どこの部落にもお寺さんがあるとは限りません。お寺さんまでの道のりが
遠い場合,部落に”阿弥陀堂”などを建てて,そこでみんなでお経を唱え
ることもあったと思います。そして時代とともに信仰心が薄れ,車に乗れ
ば遠くのお寺さんまで楽に行ける時代となりました。かくして部落の阿弥
陀堂は朽ちていく運命に…。そうした建物をこれまでいくつも見てきまし
た。忘れ去られた存在です。

この石仏はまだ幸せな方です。部落にあった石仏を集め,一カ所に保管さ
れていました。ここには三体の双体道祖神が置かれていました。これは事
前調査の段階でも出てこず,思わずニッコリです。本当に静かな場所です。
聞こえるのは野鳥の声くらいです。

さてこの石仏,全く私の好みで選んであります。群馬県の双体道祖神に関
する書物にも出てきません。それでいいのです。世に送る出すのは私だけ
かもしれません。破風の下に両神が彫ってある,ただそれだけです。ただ
それだけですが,この50cmにも満たない石仏から,私には強烈なものを感
じます。有名なものだけが素晴らしいとは限りません。この若い両神,静
かに手を取り合い真っ直ぐに前を向いています。但し女神は,幾分伏し目
がちですが。この女神,私には相当な美形と感じられました。そして控え
めにも見えてきます。現在自分の置かれた立場から見ると,夢のような女
神に見えてきます。素晴らしい。

赤城・持柏木<https://www.mapion.co.jp/m2/36.50666534322461,139.05844507665887,17>

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