これも事前調査の折,是非撮りたいものの一つに挙げていました。
(今回の撮影旅行では,いわゆる盗難が相次いでいてガッカリした
ものが,いくつもあります。神様を盗んで一体どうするのでしょう
ねえ。)これは個人宅にあるということで,そういった盗難には縁
がないことを願っていました。

ドアフォンを押すと奥様が応対していただけました。「お宅様の道
祖神,是非写真を撮らせていただけませんか」「今ですか」「順に
回っていますから,できたら今撮りたいのですが」「草がはえてい
ますけど,いいですか」「ありがとうございます」。ここまでは良
かった。が,裏庭に行く途中から蜘蛛の巣が…。そして見付けまし
たが,木の枝が邪魔しています。さらに10畳ほどの浅い池の向こう
に置いてあります。長いレンズに交換しても枝が邪魔します。短い
レンズでは届きません。再び奥様にお願いに参りました。「池に浮
かべるものをお借りしたいのですが」と。ちょうど家の隅に瓶ビー
ル用のケースが三つありました。それをお借りし,池に置きました。
浅いですが池に落ちたら…。右も左も上も木の枝に…。恐る恐る枝
をかき分けての撮影です。

以前同業者が勝手に枝を折ってから,こういった石仏撮影マニアに
は厳しいと言われています。ご主人はそれを知って怒り心頭…理解
できます。左下に”高坂”ときちんと先祖様が依頼して石工に作ら
せたことが分かります。

これは相当な豪農だったと推察されます。石といい彫りといい,素
晴らしい保存状態です。眉と目の彫り方は,まさに仏像の彫りその
ものです。石工は,いろいろな仏像を見てきた人だと思います。
”道陸神”と刻まれ,惚れ惚れするものです。足下がグラグラする
中,池の上に浮いた状態での撮影です。このような経験は滅多にで
きません。両神ともに伏し目がちな表情ですが,衣から出す手はし
っかりと結ばれています。このように末永く残り,大切にされてき
た石仏,幸せでしょうねえ。

撮影後,使わせていただいたものを元の場所に返却,お礼を言って
立ち去りました。次に来る石仏ファンのために。

新里・大久保<https://www.mapion.co.jp/m2/36.44577098778338,139.2326491877338,17>

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