事前準備をしている時,「これは撮りたい」と思う石仏にいくつも出会います。
そして「何が何でも撮ってやる」と意気込んで空振り?これは相当なショック
を受けます。こういった苦い経験は,毎回あります。本来ならば,もっと時間
をかけて探索すべきでしょうが,一つのものにそれ程時間をかけるわけにはい
きません。泣く泣く断念する訳です。

屋台原町鍋改戸,10軒足らずの小さな部落です。急な坂を上り,この字名に着
きました。部落の入り口や小さな祠を探しましたが…。遠くに軽トラックを発
見,ビニルハウスで農作業している方にお聞きしました。「口で言っても分か
らない。付いてきなさい。」,誠にありがたい言葉です。草地を通り抜け,竹
藪の前で止まりました。イノシシの防御柵がありました。そこから指さして,
「あのあたりにあるよ」と。おいおい一体どうやってたどり着く?防御柵を迂
回して,竹藪の中に入りました。
石仏が数体,後ろ姿を現しました。どうやって前にたどり着く?斜面を滑るよ
うに降り,今度はあの高さをどうやって撮影?竹藪の中,露出は低下していま
す。三脚を伸ばし,セティングです。レンズを通して表情を細かく観察,天保
6年(1835年…182年前)がはっきりと確認できます。素晴らしい保存状態で
す。

何よりお二人の表情が素晴らしいです。男神の笑顔,女神の積極的な行動(男
神の手を引いています。),無表情に見えてなかなかの女神です。仲の良いお
二人,小さな部落ですが,約200年間村人達に守られてきたものだと思いまし
た。このマイナーな趣味にはまり込んでいる私ですが,こういった石仏に出会
うと本当に嬉しくなります。秀作です。

<沼田市屋形原町鍋改戸:https://www.mapion.co.jp/m2/36.61041218874762,139.03166053743982,17>

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